2008年度文化連盟執行委員会決起要綱

 我々法政大学文化連盟は1959年の創立以来、所属サークルの活動の相互補助と相互検証、相互保障を会是として活動に邁進してきた。所属するサークルはその文化的活動を相互に助け合い、また高め合い、それらを有効に機能させる機関として文化連盟は存在した。しかしながら、昨年度に突如強行された学友会組織再編を受け、文化連盟は非公認団体となり多くのサークルが組織を離反していった。公認権を奪われ、予算の配分権までも削がれた文化連盟には何ら目に見えるメリットがないからだ。
 文化連盟規約第一章総則第二条「本連盟は学問・文化・芸術の研究会実践活動を通じて平和と民主主義の発展に寄与し併せて学内生活の充実を図り学問・文化・芸術の向上に寄与することを目的とする」。
 大学に代わりサークルを公認し、資金の運用までも手掛けた旧文化連盟は言うなれば、既得権益である。新生文化連盟は権威を失い、金も信頼も失った。だが、在野精神という名の尊い意識と原点回帰の機会を得たのだ。上記の条文の本意に今一度回帰し、自主文化創造とは何たるか、主体的活動とは何たるかを、大学の自治とは何たるかを問い直す時がきたと言えよう。機は熟した、我々文化連盟はサークルとは何か文化活動とは何か、そして学徒とは、大学とは何かを自らの頭で思考し定義を確立し、時に止揚しなければならない。

 我らが母校法政大学、その内実は欺瞞に満ち、思想差別と迫害、政治弾圧がまかり通る悪しき伏魔殿と化した。権威は失墜し、学府を冠する機関としてその体を成していない。2006年3月14日に起きた29名の学生不当逮捕を皮切りに2年間で延べ人数83名が不当逮捕され、一部は無実の罪で起訴され現在も係争中である。大学当局はこれらの警察権力導入を臆面もなく学生に対する抑止として使用し、いいように大学の規則や組織を変え、施設を改修した。法政大学の看板である法学部は、不当逮捕され不起訴となり釈放された学生に対し逮捕の事実をもって停学・退学の処分を下し、法学者でありながら推定無罪の精神を自ら放棄してみせた。学生証を提示して入校した本学学生がなぜ建造物不法侵入で逮捕され、その事実をもって処分されるのか。延べ83名に及ぶ一連の逮捕劇は法政大学で起きた事故ではなく、大学と警察、司法によって仕組まれた政治弾圧であることは言うまでもない。法政大学当局は警視庁公安部などと結託して思想差別と迫害に手を染め、それらの余波を大学経営に都合良く利用しているのは明白である。前総長平林千牧の謳った大学改革の名の下で行われた人権蹂躙と迫害によって多くの若者が尊厳を踏みにじられ、人生を破壊された。過激派、危険な政治セクトを討伐すると喧伝した当局が後に残したものは総数60個を越す監視カメラを備え、全室にカードキーと赤外線センサー、ガラス張りの壁面完備の監獄校舎だ。学内のいたるところに監視カメラが日々増設されており、学生の憩いの場がある日突然改築され教室にされる。あろうことか事後説明さえもない。そして今日、人権蹂躙の手は政治セクトとは無縁の一般学生にまで及んだ。大学に反抗的だからという幼稚で低俗な理由で警備員に毎日の入退校時刻をチェックさせ、尾行させ、その人物と関係する周囲の人間にまで嫌がらせを加えている。公衆の面前で大学教授という肩書きを持つ人間が女子学生に暴力を振るい、他の学生にも同じ行為をけしかけている。公安警察が大学内を闊歩し、警備活動の名の下に思想差別と人権蹂躙を演じてみせ、大学教員もそれに加担している。それでいて、思想信条の自由と表現の自由を堅持するなどと声明を発するこの法政大学はもはや末期的症状であろう。事態は悪化の一途を急速に辿り、大人の背を見てついには学生の中からも人権蹂躙と迫害、思想差別に手を染める者が現れた事は一刻の猶予もない証左である。

 我々文化連盟は深く社会の大勢と大学の現状とに鑑み、非常の措置を以てこの時局を収拾せんと欲する。愚かな教育者、偽善を厭わない学者たちの姿に影響され、大道を踏み外す学生がこれ以上生産されることのないように。世の中に信義を失い、絶望する学生を一人も生まないために。栄えある学府の名をこれ以上汚辱することの無きように。我々文化連盟は堅く正義を信じ、任重くして道遠きを自覚し、道義を篤く全力を未来の建設に傾け、以て後世の為に道を開かんと欲するのだ。今後、文化連盟諸氏が受ける困難は尋常にあらずとも、一切の動揺がないことを期する。我らの決起が、日本の民主主義と平和、文化の発展の一助となり得ることに心して各人は事に臨むべし。

新生文化連盟の行動目標をここに記し、学友諸君の理解と協力を賜りたい。我々が目指すもの、それらを成し遂げて見える景色を共に共感して頂きたい。

甲、 延べ83名に及ぶ不当逮捕者、人権抑圧や政治弾圧の犠牲者への公式な謝罪を要求する。
1、 総長以下、然るべき役職の者による当事者面前での謝罪とそれに伴う如何なる要望にも真摯に対応すること。また、弾圧によって下された学内処分は全て記録から削除すること。
2、 1に加えて、世情を騒がせた法政大学当局は然るべきメディアに謝罪広告を掲載する義務を負っている。よって謝罪広告を各紙の一面に載せること。
3、 弾圧によって裁判沙汰となった事案については、即刻告訴を取り下げ被告の弁護費用を負担すること。
4、 学内で報道を担うサークルには積極的に協力し、その活動を妨害しないこと。

乙、 一連の政治弾圧に加担した教職員に対して大学として厳正な態度で臨むこと。
1、 弾圧の犠牲者、当該学生、その他関係者との間に一席を設け、対応について十分な協議をすること。
2、 1に加え、被害者の意思を充分に尊重すること。
3、 然るべき地位にいる教職員(現職、前職問わず)で弾圧に加担した者には特に厳正な処分を行うこと。
4、 第三者による調査委員会を設け、社会的機関として恥ずかしくない対応で誠意を示すこと。事例によっては訴訟の検討も行うこと。

丙、 学生側と充分な協議をした上で学内環境の改善を図ること。
1、 学内にある全ての監視カメラの撤去と赤外線センサーの除去、学生証カードキーの撤廃を完遂すること。
2、 学生側と充分な協議の上で学友会組織を見直すこと。
3、 相互休講措置廃止の撤回。
4、 学費についてはスライド制なる制度を廃止し、学生側に詳細な説明を行い協議の場を設け要望があれば引き下げをすること。
5、 外堀校舎の利用規則の見直しを学生側と協議の上で実行すること。
6、 外堀校舎の駐輪場の料金を廃止すること。
7、 学生の意見を吸い上げる機関を早急に設置、あるいはそれらの形成を支援し、充分な交渉環境を 作り要望には原則として応えること。
8、 キャンパス利用規約の全面的な見直しを学生側と協議の上で行うこと。

 我々は日々刻々と根付いていく学生管理と、それを容認する風潮が蔓延していくことを危惧する。栄えある学府が国家権力の御用機関と化し、その威厳と存在価値を喪失することを憂慮する。大学が、大学の自治を放棄した時、それは民族と共同体組織の破綻を意味する。そのことは歴史に明らかだ。学の探求者が事なかれ主義のサラリーマンに成り下がり、それを見て育つ次代の若者に権利意識や政治意識、ひいては個人としての尊厳などが確立できる訳がないことは自明の理だ。ここ数年の法政大学の姿はかつての国家総動員法統制下のそれを彷彿とさせるものがある。反体制を徹底的に弾圧し批判精神を根絶やしにし、その焼け野原に築かれた都は監視カメラが跋扈する監獄とは笑止千万である。学友達は警察力に震え上がり、感覚を麻痺し弾圧に加担する者まで出現している今日、誰かが大義に殉じる覚悟でもって決起しなければならない。そしてそれは我ら無冠の学徒の立ちたるところである。学友のため、後世のため、我々文化連盟は学徒の触覚たらんと敢然と決起する。恥を厭わぬ情けなき世代を駆逐し、悪しきニヒリズムと退廃から若き魂を救済すべく我ら堅く正義を信じ邁進するのみである。憂憤を以て警察権力の介入を弾劾し、義憤を以てそれを許し屈する体制者を打破する。そして愛校心を以て我ら全学決起の先兵とならん。
 我々が求めるものは誰もが安心して学べる、共に共存し合える平和な大学である。

2008年6月18日 文化連盟執行委員会一同


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